彼らは人間と似たような社会を築いていた。

いくつもの種が存在し、それぞれがいがみ合い、対立して暮らしていた。 長い長い憎しみと敵対の歴史といつくかの大きな戦争を経て、蟻の女王は蟻達皆に言った。 「もうこれからは、他の虫達と争

って暮らすのはやめましょう。」 蟻がこう宣言して戦いをやめてしまったので、他の虫達は拍子抜けしてしまった。

蟻達は滅んでいくかと思われた。 だがここで不思議なことが起こった。蟻達が戦いをやめてから、他の虫たちも続々と戦うことをやめていった。彼らはそれまで耳が聞こえなかったのに、声を聞くようになった。

虫達はすごい勢いで、今までの歴史を変えていった。争いの歴史は克服され、彼らは自分たちの仕事に黙々と取り掛かった。より良いエサを集め、より良い巣をつくり、より良い交尾を求め、生命を

全うして死んでいった。彼らの子は優秀で、その子はもっと優れていた。

彼らは人間を引き離しつつあった。生命を豊かに全うすることにおいて、虫は真面目であった。かつて彼らは暇さえあれば争いをし、殺し、痛めつけ合い、人間や動物や自然にも敵対していたという

のに、何が彼らを変えたのだろうか。

ある時彼らは言葉を聞いた。それは直観や行動となって彼らの現前にあらわれた。彼らは自分を超えた永遠の世界とつながっていることを感じたのである。 虫達は自己を実現することに余念が無

い。

先祖から受け継いだ自分達の力を使って全く新しい存在へと進化を遂げるだろう。それはいつの日か人間の目に分かる形となってあらわれるだろう。

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